創薬からドローン・宇宙まで〜バイオ研究最前線 #1

学部の横串連携が社会課題を解決する
〜千葉大学の「バイオ研究最前線」 千葉大学 学術研究・イノベーション推進機構 藤江 幸一[ Koichi Fujie ]

2022.06.05

目次

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パリ協定、SDGs の採択を受け、持続可能な経済成⻑と社会的な課題解決の両⽴に資するバイオエコノミーの推進は、主要国においても国家戦略として位置付けられた。我が国でも2019年6⽉に「バイオ戦略 2019」が策定され、この中で大学のバイオ研究にも期待が寄せられている。千葉大学は2021年7月、新たなビジョン「世界に冠たる千葉大学へ」を打ち出し、その実現に向けて学術研究のより一層の強化と、研究成果の社会実装のさらなる推進を両輪として、千葉大発イノベーション創出を目指している。基礎・基盤研究の一層の推進と産学連携に必要な機能・専門人材の集約により、イノベーションの創出、地域・産業の活性化に寄与することを目的に設立された学術研究・イノベーション推進機構(IMO)で機構長を務める藤江幸一理事に、千葉大学が力を入れているバイオ研究と社会実装の方向性について伺った。

藤江幸一(ふじえ こういち)

千葉大学 理事(研究担当)/学術研究・イノベーション推進機構(IMO)機構長

千葉大学はなぜバイオ研究を重視するのか

トップナレッジかつユニークな研究が学部を超えて繋がっている良さ

私が千葉大学に来たのは2021年です。しかしそれ以前から園芸学部、薬学部、医学部、工学部、理学部などがそれぞれ非常に先端的な研究に取り組んでいる点に注目していました。そしてその研究がうまく繋がれば、千葉大学の独自性が高まると考えていました。

千葉大学には豊富な研究力、グローバルに展開する国際ネットワーク力、人材育成や産学連携体制などのソフト力、そして大学病院や環境リモートセンシング研究センター、国内唯一の真菌医学研究センターなどのハード力、という強みがあります。この研究成果を、IMOを通じて社会に還元していきたいと考えています。

バイオテクノロジーとライフサイエンス分野のトップリーダー

サステナビリティ(SDGs)とクオリティオブライフ(QOL)は今の社会が実現すべきキーワードですが、この二つの面から見る時、私はバイオテクノロジーを前面に出した社会を作っていく必要があるだろうと考えています。

持続可能な社会を作るという面ではバイオテクノロジーの貢献が必要不可欠であり、生活の質を向上していくという面ではライフサイエンスの力を医薬や健康保全・向上に役立てていく必要がありますが、千葉大学ではそれが実現できます。なぜなら、千葉大学にはバイオテクノロジーとライフサイエンスの分野で多数のトップリーダーがおり、先進的な研究成果が集積しているからです。

Greater Tokyo Biocommunityへの参画

このような知見を役立てるため、千葉大学は日本政府が2019年に策定した「バイオ戦略」で一つの柱として掲げている「Greater Tokyo Biocommunity(GTB)」に、協議会のメンバーとして参画しています。

GTBは2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現するため、首都圏の産官学連携でバイオコミュニティの形成を目指し、2021年10月に組織されたものです。今後、GTBの枠組みも活用しつつ、各キャンパスにおいて最先端のバイオ関連の研究開発をさらに推進し、研究成果を産業化していくための橋渡しとなる機能を強化、さらには産業界のニーズに応えるべく、人材育成も行っていきたいと考えています。

千葉大学が考えるバイオ研究とは

私たちの考えているバイオ研究は大きく分けて二つあります。一つはライフサイエンス分野、もう一つがバイオテクノロジー分野。これらはQOLの向上ならびに、持続可能社会の実現としてのSDGsに直結するテーマです。

学術研究から社会貢献まで一気通貫でつながる千葉大学の研究

ライフサイエンスの分野では、千葉大学の一気通貫した研究環境が大いに社会に貢献できると考えています。研究の一例を示しますと、まず園芸学部が薬理効果のある植物の生産性向上を研究し、次に薬学部が植物から有効成分を分離・分析、さらに薬理効果向上に向け構造変換を行います。

一方、動物からヒトレベルでの薬効を医学部で確認します。安全性が確認できれば附属病院でその効果を試験していくことも可能といったように、一連の研究環境が揃っているのです。基礎・基盤研究の深掘りから臨床による実社会導入準備まで、シームレスな研究活動ができることで社会の課題解決、そして社会貢献によりすばやく対応できます。

CO2を土壌中に貯留するバイオテクノロジー

カーボンニュートラルは社会が直面している大きな問題ですが、千葉大学の研究によりこれを前進させることが可能です。例えば生態系をうまく管理することにより大気中の炭素を土壌中に有機物として保持できれば、大気中のCO2が減るわけです。熱帯雨林を伐採し作物を栽培しようとすると、熱帯雨林の木質、土壌中の有機物が分解してCO2となり、大気中に出てしまいます。

そこでその逆、熱帯雨林をうまく管理、あるいは土壌中に有機物が溜まるようにバイオマスを土壌に還元することによって、炭素を土中や森林に貯留できるわけです。千葉大学では園芸学部が植物の栽培や生態系管理を研究しており、これを実現させることができると考えています。

生態系や気象、環境変化をモニタリングできる環境リモートセンシングセンターのデータサイエンス

また環境リモートセンシング研究センターでは、衛星を使って地球上の生態系や気象、環境の変化をモニタリングしています。衛星モニタリングと園芸学部の生態系管理を組み合わせることによって地球上の生態系の変化、また、どのように生態系を管理すればCO2を固定化できるかが分かります。

さらに地球環境の急激な変化に対応するため、かなり精緻な気象予測も研究しています。ビッグデータを活用したデータサイエンスで、環境問題や防災にも対応できるのです。

このセンターは文部科学省から全国共同利用・共同研究拠点として認可されており、国内はもとより、世界のさまざまな大学や機関と国際共同研究を推進し、リモートセンシングの深化・発展・活用・人材育成を通して地球環境の保全や防災に貢献しています。

研究成果の社会への還元と今後の研究テーマ

単体で、パッケージで、さまざまな形で社会に役立つ研究

千葉大学では総合大学としての強みを生かし、これまでご紹介したテーマ以外にもライフサイエンス分野では創薬の加速化につながる「膜タンパク質の構造・機能の解明」や注射型ワクチンの課題を解決する「粘膜ワクチンの開発」、バイオテクノロジー分野では月の表面で野菜を作りゼロエミッションを達成することを目指す「宇宙園芸」など、多岐に渡るテーマで研究を続けています。

それらの研究からは、創薬など先進性の高い一連の研究パッケージの創生を加速化するなどの成果に加えて、単一の要素としても幅広く活用できる新しい技術や機能の創出にも貢献できます。

千葉大学には実にさまざまな知と研究のリソースがあります。これらを有効に活用することによってサステナビリティ(SDGs)とクオリティオブライフ(QOL)を向上し、Well being(一人ひとりの多様な幸せ)の実現に貢献していきたいと考えています。一層の社会還元・社会貢献を推進するために、多くの皆さまに千葉大学の「知」と「研究」を知っていただきたいと考えています。

連載
創薬からドローン・宇宙まで〜バイオ研究最前線

SDGsの達成とQOL向上に必要不可欠なバイオテクノロジーの推進。バイオテクノロジーとライフサイエンス分野のトップリーダーたちが挑むユニークな研究とは?

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