千葉大学大学院工学研究院の山田泰弘准教授、同大大学院理学研究院の大場友則准教授らの研究チームは、窒素を含む官能基(含窒素官能基)注1) が隣接して導入された新たな炭素材料“Viciazite”の合成に成功しました。隣接したアミノ基(NH2基)を含む炭素材料は、CO2の脱離が60℃以下という低温で可能なため、大気中からのCO2回収などにおいて、大幅なコスト削減を可能にする新技術として期待されます。隣接した含窒素官能基を有する炭素材料は金属イオンの吸着材や触媒への応用も期待できます。
本研究成果は、2026年2月27日に学術誌Carbonにおいてオンラインで公開されました。
(論文はこちら:10.1016/j.carbon.2026.121405)
■研究の背景
炭素材料は比表面積が大きく、軽量かつ安価なものが多いことから、これまでCO2の吸着材として広く利用されてきました。しかし、従来の炭素材料は構造が十分に制御されておらず、官能基とCO2との相互作用については、実測において明確に解明されていませんでした。これまでに研究チームは、触媒を使用することなく、1種類の含窒素官能基などが選択的に導入された炭素材料の合成法を多数報告してきました参考文献1,2)。しかし、含窒素官能基が隣接した状態で選択的に導入された炭素材料の開発は未開拓の領域でした。そこで本研究では、炭素構造中の窒素官能基であるピローリック窒素やアミノ基(NH2基)が隣接した状態で導入された新たな炭素材料“Viciazite”を合成しました(図)。さらに、この材料を活性炭素繊維上に被覆することで、CO2吸着材としての性能評価を行いました。

赤色の数字は、炭素材料中で各官能基が制御された割合
■研究成果のポイント
NMR(核磁気共鳴)測定および理論計算により、合成した炭素材料において、官能基が隣接して存在していることを証明しました。性能評価の結果、特にNH2基が隣接した状態で導入された炭素材料において、吸着したCO2のほとんどが60℃以下という低温で脱離することが判明しました。一般的にはCO2の脱離には100℃以上の加熱を必要とすることから、脱離温度を大幅に低減することに成功しました。工場の廃熱などと組み合わせることにより、コストをほぼかけずに効率的なCO2回収プロセスが可能になります。
■今後の展望
本成果に類似の成果として、OH基が隣接した炭素材料“Vicioxite”も開発し、2026年3月3日に学術誌Carbon Reports(DOI:10.7209/carbon.050201)で発表されています。今後は、より低コストで高い吸着能を持つ材料の開発を進め、CO2回収により適した表面構造を明らかにするとともに、その構造を選択的に導入した革新的な炭素材料の合成を目指していきたいと考えています。
■用語解説
注1) 含窒素官能基: 官能基は、物質の化学的性質や反応性を決める特定の原子の集まり。含窒素官能基は、官能基のうち窒素原子を含む官能基の総称。
■論文情報
タイトル:Viciazites: Carbon Materials with Adjacent Nitrogen Functionalities for Advanced CO2 Capture
著者:K. Kondo, A. Uchizono, L. Pu, I. Takahashi, R. Suzuki, S. Nakamura, K. Kan, K. Gotoh, T. Soejima, S. Sato, T. Ohba*, Y. Yamada*
雑誌名:Carbon
DOI:10.1016/j.carbon.2026.121405
■参考文献1)
タイトル:Toward strategical bottom-up synthesis of carbon materials with exceptionally high pyrrolic-nitrogen content: Development of screening techniques
雑誌名:Carbon
DOI:10.1016/j.carbon.2024.118904
■参考文献2)
タイトル:Toward strategical bottom-up synthesis of carbon materials with exceptionally high basal-nitrogen content: Development of screening techniques
雑誌名:Carbon
DOI:10.1016/j.carbon.2022.11.043
■研究プロジェクトについて
本研究は、一般財団法人 向科学技術振興財団などの支援によって実施されました。
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