【共同リリース】神経性過食症女性に治療者誘導型オンライン認知行動療法を提供して過食と代償行動エピソードを減らすことに成功〜アセスメント盲検・多施設ランダム化比較試験〜

2025.08.25

目次

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■本研究成果のポイント

  • 神経性過食症注1の女性患者を対象に、全国6つの大学病院1ナショナルセンターによる多施設共同ランダム化比較試験注2を行い、治療者誘導型オンライン認知行動療法注3の有効性をアジアで初めて、また世界で2例目として実証しました。
  • 過食や代償行動のエピソードを減少させ、寛解率注4も高める効果があることを明らかにしました。
  • 病院に通う負担を軽減し、自宅で専門的な治療を受けることができる新しい選択肢として、今後の広い活用が期待されます。

■概要

神経性過食症は、深刻な健康被害を伴う精神疾患ですが、科学的根拠のある認知行動療法を提供可能な施設は都市部に偏在しており、専門家も少ないため、非常にたくさんの方が専門的な治療を受ける機会がありません。このような問題を解決するために本研究では、日本文化に合わせた治療者誘導型オンライン認知行動療法を開発し、その有効性を全国6つの大学病院1ナショナルセンターによる多施設共同ランダム化比較試験で検証しました。福井大学子どものこころの発達研究センターの濱谷沙世助教と水野賀史准教授、同大学医学系部門医学領域病態制御医学講座精神医学の小坂浩隆教授、鹿児島大学病院の松本一記研究准教授、スウェーデン・リンショーピング大学のGerhard Andersson教授らの研究グループは、外来診療中の神経性過食症と診断された女性61人を対象に本試験を実施しました。その結果、通常治療のみのグループ(外来診療のみ)に比べて、治療者誘導型オンライン認知行動療法グループは過食と代償行動(嘔吐・下剤乱用など)の回数が顕著に減少したことを、アジア圏で初めて実証しました。また、これは2024年7月ドイツの研究チームの報告に次いで(Hartmann et al., 2024)、世界で2番目の報告です。これにより、外来通院の負担を減らし、自宅で専門的な治療を受けられる新たな選択肢として、治療者誘導型オンライン認知行動療法の普及が期待されます。本研究成果は、米国医師会が発行する世界トップクラスの医学系学術誌「JAMA Network Open(Impact Factor=10.5)」に2025年8月5日(電子版)に掲載されました。

■用語解説

(注1)神経性過食症
神経性過食症は、食行動をコントロールできずに短時間に大量の食べ物を食べてしまう症状で、過食と代償行動(嘔吐や下剤乱用など)を繰り返します。また、体重に対する過度のこだわり、自己評価への体重・体型の過剰な影響があり、日常生活機能に重大な障害を引き起こす精神疾患です。男女比はおおむね1対10と、女性に多い病気です。

(注2)ランダム化比較試験
研究の対象者を2つ以上のグループに無作為に分け(ランダム化)、治療法などの効果を検証する方法です。

(注3)治療者誘導型オンライン認知行動療法
文章、写真、動画形式等のセルフヘルプのプログラムをWeb上で公開し、患者がその治療(認知行動療法)プログラムを治療者のガイドを受けながら取り組むという治療アプローチです。予約の必要性はなく、患者のタイミングでログインできます。治療者と患者とのやり取りは、チャットやメールで行います。

(注4)寛解率
寛解とは、病気の症状が落ち着いて安定し、日常生活に支障のないレベルまで回復した状態を指します。病気が完全に治ったかどうかは、長期的な経過観察が必要なため現時点では判断できませんが、現在の時点で社会生活を問題なく送れる程度に改善していることを意味します。寛解率は、こうした寛解状態に達した患者の割合を示す指標です。

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