#次世代を創る研究者たち

ネットワークで大きく広がる
研究の可能性 千葉大学 大学院人文科学研究院/文学部 教授(※取材当時) 池田 忍[ Shinobu IKEDA ]

2022.08.03

目次

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自分が気づかないことに研究のヒントがある

研究室の学生には、自分が知っていることはできるだけ伝えたいと考えています。ですから指導に当たるときは、調査のための依頼状の書き方からはじまり、自分が使ってきた調査方法も教えますし、調査に出かけて美術品をどう扱うかも、事前に練習を重ねます。論文執筆にも、可能な限りとことんつきあいます。

また、自分とは異なる視点を知り、研究の視座と方法を広げてほしいという思いがあるので、学外に同世代のネットワークをつくることを、ことあるごとに勧めています。

客員講師としてハイデルベルク大学滞在時に、
メラニー・トレーデ教授、ゼミに参加した院生たちと(2007年)

若いときに学外ネットワークを築くことは、研究を続けていく上でとても重要な意味を持ちます。私の場合も、調査の手ほどきをしてくれたのは違う大学の先輩でしたし、留学していた米国の大学の大学院生にもさまざまなことを教えてもらいました。世界の各地から集う大学院生たちによる大学院生会議に参加し、その中で出会った人たちからもたくさんのことを学びました。数十人で日本国内の調査に回ったり、海外にも出かけて同じように調査に回ったりと、同世代の人たちと精力的に活動した体験は、その後の調査研究の土台になっています。

千野香織「新視点美術史講演会」(ソウル)にて、美術家のユン・ソクナム氏、友人のキム・ヘシン氏と(2008年)

学外に目を向けると、自分が気づかないことに注目し、熱意を持って研究している人がいるものです。そういう人たちとつながることにより、自分と異なる視点を知り、それが研究の視座と方法を広げることにつながるのです。

特に、異なる分野を研究する人たちとつながることには特別な意味があると私は考えています。ひとつの美術作品であっても、歴史学者の見方と、建築史家の見方、私たちのような美術史研究者の見方は大きく異なります。その異なる見方を知ることによって、今までまったく考えていなかった新しい視点を持つことができるからです。複眼的な視点を身に付けて研究を深め、新しい研究の道を自ら開いていってほしいと思います。

アイヌ・アート(貝沢徹作「ニポポ人形」)が展示されるアーツ千代田3331にて研究仲間と(2015年)
ハーバード大学付属美術館にて、研究仲間や院生と実施した源氏物語画帖調査(2016年)

千葉大学研究者ロールモデル集vol.1より転載

(※所属・役職は取材当時のもの)

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